日記・コラム・つぶやき
2018年01月14日

激安施工?それって…

いつもお世話になっております。

ルーチェ代表の綱田です。

 

最近私たちの業界でもインターネットで商品のみならず工事も販売しているサイトが多くあります。

まあうちもインターネットを通じてお客様のご依頼があり、それぞれのお客様にプランを作成してお見積りしてご契約させていただくという点においては同じです。

 

でもルーチェでは激安施工というキーワードは一切使っておりません。

施工=工事とも表現しますが、工事を激安にするという意味が私にはよくわからない。

 

特によく見かけるのが『キャンペーン値引で工事代〇〇〇円引き!』みたいなの。

何のキャンペーンなんだろう?

ウィキペディアでは、

キャンペーン英語Campaign)とは、

  • 企業、団体、あるいは歌手や芸能人などの個人が社会に対する宣伝活動を行うこと。
  • 目的を持って一定の多数に働きかけること。または、その運動。

とある。

まあ宣伝ってことですね。宣伝のために金額を安くしてあげるって事。

 

例えばカーポート1台用の工事代、本来は3.5万円掛かる工事だけど、宣伝になるから2万円引いて、1.5万円で工事しますって事。

沢山施工販売サイトがあるので、どの店のがこの値段とは言いませんが、たいていこんな感じで出ているところが多いですね。

実際の話になると、1.5万円でカーポート1台用の工事をする職人さんは居ません。

その理由は単純明快、出来ないからです。

 

カーポート(まあ普通の片流れ式の1台用)の工事をするのにどういう工程を踏むかをご説明しましょう。

先ず柱を建てるための穴を掘ります。もし穴を掘る位置にコンクリートがあった場合、それを斫って(割る事です)コンクリートを除去してから穴を掘ります。

ちなみに穴のサイズは最小で40cm角×深さ55cmくらい、大きい場合は75cm角×深さ55cmくらいです。(穴1個で)

小さい場合と大きい場合の違いは、土間コンクリートを上部に打設するという前提または既にコンクリートがあるという場合は小さい穴、柱のところは全て土である場合は大きい穴となります。

この穴の大きさがメーカーが計算した強度を発揮できる大きさとなっています。

そして掘った穴に柱を建て、カーポート本体を組み立てます。この時柱をコンクリートで固定せずに仮の倒れ止め等の支保工を施して全体を先に組み上げてしまう方法が最近では一般的となっています。全ての組み立てが完了してから水平垂直の立ちをしっかり見てコンクリートを穴に充填し、コンクリートを養生後支保工をバラシて完成となります。

 

この工程、どんなに早くても2日以上にまたいで時間が掛かります。

なぜなら最終の支保工のバラシはコンクリート養生固定後しか出来ない為です。

穴掘り~組立完了までは最短で半日から1日で可能です。

ですので、現場がよほど近く(ご近所さんレベルの近さ)でもない限り、都合1日は絶対に必要な施工時間ということになります。

(当然移動時間もありますので。)

 

これらを踏まえて1台のカーポートを作るのにいったいどれくらいのコストが掛かるかをざっと計算してみます。

・職人さんの日当(1.7万円~2.5万円くらい開きがあると思うので平均値を取って) 2.1万円

・掘削残土処分代 0.4×0.4×0.55×2か所=0.176m3 残土処分代単価(外構工事の時のおおよその単価)7000円×0.176=1232円

・斫り機械損料(経験上9割以上の現場で斫り発生するので) 800円(決まってはいないが概ねこれくらい)

・砂2:セメント1(これもだいたい) 必要量約0.15m3(比重2.4で重量計算)0.15×2.4=0.36=360㎏ 砂240㎏(土嚢8袋分)セメント120㎏(6袋) 砂30㎏300円 2400円 セメント20㎏400円 2400円 合計4800円

・移動経費 現場まで約15㎞×4回(往復2回) 60㎞÷燃費10㎞=6L 6×135円(ガソリン代)=810円

・現調費等諸経費 5000円

その他もろもろあるとは思うがとりあえずこれだけで、21000+1232+800+4800+810+5000=33642円 消費税入れたら36333円

これ実は原価レベルで掛かる費用です。加えて運営会社の儲けを入れると、税抜35000円くらいがおおよその相場ってところでしょうか。

 

私はもともと現場職人。今でもカーポート施工もテラス施工もブロック積も重機の操縦も出来ますし、今でもやっています。

ですので、どの工事にどれくらいの時間や手間が掛かって、どれくらいの原価で仕事が出来るのかを熟知しています。

 

だから余計に思うわけです。激安ってなんやねんと。

 

メーカーが作る商品については、盗難してきたものを捌いているのでなければ、安けりゃ安い方がお買い得です。

品質も安定していますし、安いから粗悪ってことはない。

 

しかし、工事が激安っていうのには問題があります。

上記のように、工事にはきちんとやれば必ず発生する原価があり、それを下回る工事価格は基本的にあり得ないからです。

工事には在庫も無ければ、赤字マイナスの作業も無いんです。

赤字マイナスの作業は自分の家だけです。お金もらわずに工事するのは自分の家だけ。

プロの職人はその技術にお金を払うからプロとして成り立っているのです。

技術を習得するために掛った時間もそうですし、プロには仕事に対する対価を支払う必要があるんです。

プロに対して工事代を値切る行為は、自分に置き換えれば、給料を下げてねと頼まれている事と全く同じだという事です。

40万円のあなたの給料、今月は35万円にしといてね。と会社に言われたらあなたは納得しますか??

35万円になっても40万円分の仕事をするぞ!と意気込みは増しますか?

 

施工販売サイトがキャンペーン値引と称して工事代を引いているのは、単純にその金額でプロに工事を依頼しているというわけではなく、安く見せている数字のカラクリってもんがあることは、おおよその消費者の皆さんが見抜いていることだと信じていますが、実際の工事現場を見ていると、本当に残念な工事でその金額を達成している場合があることが残念でなりません。

どんなカラクリがあったにせよ、総額は決まっているんです。

メーカーの取り分、会社の取り分は決まっているんです。

総額が安ければ、プロの職人さんの取り分が非常に多いって事はまず間違いなくありえません。

しわ寄せはどんな時も末端なんです。

 

私の中では、①お客様 ②職人さん ③会社

もちろん会社が無ければ職人さんは職を失うし、会社が先やろ~と思う人も居るかもしれませんが、それは違います。

お客様が居るから会社は成り立つ。職人さんが居るから会社が成り立つんです。

逆に会社が無くてもお客様は違う会社を選び、職人さんも違う職場を見つけるだけ。

 

だから私は弊社を選んでいただいたお客様に対して、ウソの無い全力の技術を提供するし、職人さんに対しても絶対に掛かるコストを抜いて安い金額で工事してもらう事は絶対にしません。

自分が培ってきた知識・技術に蓋をして金儲けをするつもりは毛頭ない。

 

本当の意味で安いと思える、いや安い工事をこれからも提供していこうと思います。

 

ルーチェはそんな工事会社です。